コバヤシアセットマネージメント > K-amジャーナル > 日銀 ETF購入施策変更か
(18.7.29)
(18.7.29)
⇒ 来週の日銀政策決定会合では、ETF購入配分を見直しか
⇒ 日経平均構成銘柄(225社)の3/4の筆頭株主は公的資金団体
⇒ 225社の中で公的資金が流入し得ていない企業は1社のみ
日銀が今月30日・31日で開く政策決定会合で、これまでのETF購入政策の変更を議論すると見られる。
日銀は10年11月から、ETF購入を年4500億円から始めた。その後徐々に購入額を増やし、16年7月からは
現在の年6兆円に引き上げた。日経新聞によると6兆円の内その内訳は, 大型株225種で構成される日経平均型に
1.5兆円、東証1部全銘柄で構成されるTOPIX型に4兆円程度配分されていると。
その結果、ETFは資産残高34兆2200億円(18年6月末現在)のうち、約26兆円と推計され全体の約76%を
日銀が占めている。
政策決定会合で検討されるに至る問題点と、今後の展開について検証してみる。
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株式市場で「クジラ」と称する公的資本が、日本企業の株式保有率を増やしている。
クジラとは公的資金管理・運用する5団体のこと。GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)、3共済機関、
日銀、ゆうちょ、かんぽ生命のこと。
会社四季報を見てもこうした公的機関の名前は出てこない。公的機関は個別企業の株式を保有することが
禁じられている為、主としてパッシブ運用の指数連動型ETFや低コストの投資信託を購入していると推定
される。そこで管理仲介するのが、信託銀行だ。三井住友・りそな系の日本トラスティ・サービス信託、
三菱UFJ・日生系の日本マスタートラスト信託、みずほ・第一生命系の資産管理サービス信託の3信託銀行。
当事務所では、日経平均に採用されている225社全ての上位10位までの株主構成を調査した。
(基礎データ:東洋経済新報社 2018年第2集(18年3月末)「会社四季報」)
調査に当たっては、自己株式は番外とし、同じ日本トラスティとあっても民間機関名が書いてあるものは
除外した。
又、3社以外の信託も見られるが、内容が不明の為上記3社以外は除外した。
更に、こうした3信託銀行名が全て公的資金とは断定できないことを付しておく。
1. 公的資金受入企業
ETFや投資信託の中には、日経平均型とTOPIX型の2種類がある。又、GPIFが注目しているJPX日経400という
400銘柄だけで構成されるETFや投資信託もある。企業側としては、こうした構成銘柄に選ばれることは信用を
得ることにもなり、歓迎する。
更にこうした公的資金は所謂「モノ言わない株主」で、頻繁に売買をしない謂わば安定株主なのだ。
18年3月末現在、日経平均225銘柄の内、公的資金を受け入れているのは225社全企業。0.7%を受け入れている
ヤフーを含む全ての企業に金額の多寡は別として公的資金が流入している。
25%以上の企業は、太陽誘電、東京エレクトロン、資生堂、TDK, 東邦亜鉛、ファーストリテイリング、東京
ドームの7社。この中で、日経平均株価に大きく影響しているファーストリテイリングは公的資金26.7%だが、
筆頭株主は現社長であり、長男・次男、更に同族の資産管理会社が上位を占める。
同社の場合、こうした親族での保有株式は、上位10位での集計によると47.2%。これに公的資金26.7%を
加算すると、実に74%は固定株主になる。こうした公的資金が今後とも間接的とは言え、企業株主になる
ことを続けて行けば益々一般株主希望者の入り場が狭まってくる。つまり、浮遊株の減少が問題になり、
市場で流通する株がなくなることを意味する。
2. 公的資金が筆頭株主
日経新聞18.6.27付けには、上場企業3735社中1446社で公的資金が10位以内に入っていると報じているが、
当事務所の調べによると、日経平均構成225銘柄の内、筆頭蘭に公的資金を扱うと言われる上記3信託銀行が
名がある企業数は162社。全体の72%に当たる。
日本を代表する大企業である日経平均225社の内、実に3/4の企業の筆頭株主が実は公的資金であるとしたら、
将来問題を引き起こすのではないかと懸念される。
3. 政策決定会合での予想される政策変更
仮に日銀が上記日経新聞のような資金配分で、日経平均(225社)1.5兆円、TOPIX(2105社)4兆円を
購入継続すると、日経平均225社への配分は徐々に多くなる。
そこで日銀としては、年6兆円の資金の在り方を議論し、日経平均とTOPIXの比率を見直すだろうと見られる。
こうした公益資金もいつかは、売却して譲渡利益を得なければならない。
しかし、現在その姿勢を示すだけで、市場の下落は想定できるので、6兆円は継続になると思われるが、
配分は変えざるを得ないだろう。
(了)
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価格変動リスク: 株価の変動により投資元本を割り込むことがあります。
また、株式発行者の経営・財務状況の変化及びそれらに関する外部評価の変動等により、投資元本を割り込んだり、
その全額を失うことがあります。
株式発行者の信用リスク:市場環境の変化、株式発行者の経営・財務状況の変化及びそれらに関する外部評価の
変化等により売買に支障を来たし、換金できないリスクがあります(流動性リスク)。この結果、投資元本を割り
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また、債券発行者の経営・財務状況の変化及びそれらに関する外部評価の変化等により、投資元本を割り込んだり、
その全額を失うことがあります。一方、債券によっては、期限前に償還されることがあり、これによって投資元本を
割り込むことがあります。
債券発行者の信用リスク:市場環境の変化、債券発行者の経営・財務状況の変化及びそれらに 関する外部評価の
変化等により売買に支障を来たし、換金できないリスクがあります(流動性リスク)。この結果、投資元本を割り
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