コバヤシアセットマネージメント > K-amジャーナル > FTの記事「インドは中国を超えるは幻想」に反論
(2015/9/14)
イギリスのファイナンシャル・タイムズ(FT)は9月10日付日本語版で、「中国を追い抜くことを夢見るインドの危うさ」と題し、
インドが中国を超克することは幻想であると記事にしました。
これは日経でも翌9月11日でもこの記事を取り上げています。
その概要を読んで、私は10年来インド経済、中国経済に多少関心を持つものとしてその論点に疑問を持ちます。
そこで、FTの記事と私の同意できない理由を申し述べます。先ずFTの概要を紹介します。
『中国経済が減速して、インドが中国を追い抜き、「輝くインド」と謂われ始めている。インド財務相は「世界の成長のバトンを
引き継ぐ」とも語った。彼は「近々、インドが中国を追い越す」と語った。
確かに中国経済はGDP7%に減速させる。実際はあっという間に5%か、それ以下に向かう可能性か高い。一方インドは
7.7%に拡大すると見られている。
しかし、インドが世界経済の成長エンジンとして中国に代わるという期待は、見当違いだ。名目ベースでは、インドの
経済生産は中国の1/5だ。インドが世界のGDPに占める割合はたったの2.5%。これに対して中国は13.5%にも上る。
インド経済が中国に匹敵するということは、ネズミがトラクターを引っ張れるというようなものだ。
インドが楽々と中国の成長レベルを越えようという考えは、絶忘的なまでに独りよがりだ。インドの統計は中国の統計と
同じくらい怪しい。インドがGDPの算出方法を変更し、成長率が2%以上も上乗せした。
中国を見限るのはひどい見当違いだ。何しろ中国は、30年間に及ぶ目覚ましい発展の勢いを背に乗せている。』
確かに中国は2000年~2010年の間が最も成長が著しく、05年のGDPの比較では中国の2兆2248億ドルに対して
インドは7754億ドルと3割にとどまる程です。(日経新聞社刊「インド経済の実力」)。しかし現在はFTの記事にあるように
両国のトレンドは下記グラフにあるように更に大きく広がっています。(IMF調査による。US$ベース)
更に、両国の一人当たりGDPを比較するグラフを見ると、インドは誠に貧しい。ラオス、イエメン、ザンビアなどと順位を争います。
しかし、中国でも順位にして80位。ドミニカやペルー等とならんでいます。
インドが10,000㌦になるためには、果てしなきチャレンジに見えます。
インドの弱点を言えば、
・カースト制度や古き因習、
・製造業発展の遅れ
・国内物流の遅れ
・資源(特に原油)のない国
・不正、腐敗が蔓延社会
等が成長を阻んでいます。
ここまではFTの記事の裏付をしているようですが、以下いやそれでも「インドは中国を凌駕する」論旨を申し上げたい。
1)政治体制
インドは世界最大の民主主義国家。中国は共産党一党独裁政権。民主主義政権は法律に基ずき、多数決により国家運営が
されているのに、中国は相い入れない体制です。力で押してくる国です。
さらに中国の国家統計も、規格も、監査も、安全基準も余り信頼できない。天津大爆発や、事故を起こした高速鉄道車両を
埋めようとした映像はその典型です。食品の安全もしかり。これでは世界から中国への投資は無理。だから自ら主体になって
AIIBという世界開発銀行を作ったのでしょう。
一方、民主主義国家、自由主義国家インドは、体制に脆弱さはありますが、共通の基盤に乗っているという安心感はあります。
2)人口 (下記グラフ:資料 世界銀行)
中国では一人っ子政策の為に、人口がピークを迎えます。
一方、インドの人口はきれいなピラミッド型のように裾野を作り、労働人口も増加します。
このアドバンテージは中国ではまねできません。
3)教育/産業
インドの特徴は、3桁暗算に代表される数学教育。そして薬学やIT業界関係者が多いこと。
言語が英語であることも有利です。
原油は取れず、ほとんど輸入に頼っているので、原発化は必須です。
3)インド新政権によるインド投資
2014年5月に発足したモディ政権は、従来からあるインドの難点を克服しつつ、外資企業の投資を働きかけています。
先ず、インフラ。中速鉄道網を3兆8100億円掛けて始め、又高速鉄道も7本、4,700kmの計画を出しています。
他に鉄鋼、自動車、電子部品、携帯通信、物流、流通、研究開発拠点等の投資。エネルギー(原子力)も必要になります。
本来インドには通信や製薬、IT、アニメ、映画などの産業があります。これらとの融合が期待されます。
テーマは「MAKE IN INDIA」。
資料:世界銀行
私の結論
以上の資料から、私の結論は「沈む中国、昇るインド」と映ります。よってその時期は2025年では無理でしょうが、
2030年には「インドは中国を超える」でしょう。
(了)
本情報は当所の業務内容に掛かる投資情報の提供であり、記載されている情報は、予告なく内容を変更する場合があります。
投資に関する最終判断は、ご自身の判断と責任において行って下さい。
【金融商品取引法第37条(広告等の規制)に掛かる留意事項】
商号等
コバヤシ アセットマネージメント 所長 小林 治行 投資助言業 関東財務局長〈金商〉第2841号
加入協会 一般社団法人 日本投資顧問業協会
手数料等 投資助言の契約の前には、「投資顧問契約の契約締結前交付書面」を良くお読み頂き、ご納得のうえご契約頂きます。
報酬等は「投資顧問契約の契約締結前交付書面」又は、ホームページの投資助言業のページをよくご覧ください。
投資リスクについて
1. 株式 価格変動リスク: 株価の変動により投資元本を割り込むことがあります。 また、株式発行者の
経営・財務状況の変化及びそれらに関する外部評価の変動等により、投資元本を割り込んだり、その全額を失うことがあります。
株式発行者の信用リスク:市場環境の変化、株式発行者の経営・財務状況の変化及びそれらに関する外部評価の変化等により売買
に支障を来たし、換金できないリスクがあります(流動性リスク)。この結果、投資元本を割り込むことがあります。
2. 債券 価格変動リスク: 債券の価格は、金利変動等により上下しますので、投資元本を割り込むことがあります。 また、
債券発行者の経営・財務状況の変化及びそれらに関する外部評価の変化等により、投資元本を割り込んだり、その全額を失うことが
あります。一方、債券によっては、期限前に償還されることがあり、これによって投資元本を割り込むことがあります。
債券発行者の信用リスク:市場環境の変化、債券発行者の経営・財務状況の変化及びそれらに 関する外部評価の変化等により
売買に支障を来たし、換金できないリスクがあります(流動性リスク)。この結果、投資元本を割り込むことがあります。
3. 外国株式・外国債券 為替変動リスク:外国株式や外国債券等の外貨建て金融商品では、為替の変動により投資元本を割り込む
ことがあります。
4. 外貨建て証券 為替変動リスク:投資対象が外貨建て証券(例えば海外市場に上場にしている株式、外国政府・公的機関・企業
等が発行する債券)では、前述の株式、債券のリスクに加え、為替の変動により、投資元本を割り込むことがあります。例えば、
売却・契約時に投資時期よりも、円安・円高で手元に戻る円貨の額が変わり、円高の場合には投資元本を割り込むことがあります。
また発行した国や地域、適用する通貨発行国の経済状況や政治状況の変化等により売買に支障をきたし、換金ができないリスクが
あります。(流動性リスク)
5. 投資信託(上場投資信託=ETFを含む) 投資信託は、その投資信託が投資としている資産(例えば株式、債券、商品等)により、
価格変動リスク、信用リスク、流動性リスク、為替変動制リスクを内包しています。 このため、投資元本を割り込んだり、換金が
できなかったり、その全額を失う事があります。
6. 投資する国や地域について カントリーリスク:投資した国や地域により、その国や地域の政治・経済・社会情勢の不安定化や混乱
などで等した資金のすべて、又は一部が回収できないことがあります。 戦争や内乱、経済危機がある又は予見される国や地域に投資
することは各リスクが極めて高くなります。