日銀短観とドル円相場は関連するか?

日銀短観とドル円相場は関連するか?

(2018.5.19)

 

⇒ 日銀短観とドル円相場は関連性は5割ほど

⇒ 景気が悪くなっても、円高になる時期も

 

景気動向の有力な統計調査として、日銀短観がある。年4回、約1万社から自社の業況や経済環境の現状・先行きに

ついてどう見ているか等を日銀がアンケートを取っている。景況感を「良い」と答えた企業の割合から、「悪い」と

答えた企業の割合を引いて算出する極めてシンプルで速報性がある統計だ。

日本経済の先行性を示唆する日銀短観の動向が、ドル円相場と関連した動きをするのか検証して見る。

もし、「景気が上昇すれば円高、景気が下降すれば円安」になると考えて良いのか?

実態はそうでもあり、そうでもなさそうだ。

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日銀短観は直近3回で、20を超えている。過去20を3回連続して超えたのは2リーマン直前の2007年9月で、以来11年ぶり。

2007年9月当時の日銀短観の経済環境を調べると、同年7月に日経平均は18,238円(週次ベース)の年内最高値が出ており、

ドル円相場も115円ほど。本年3月時は、21,454円(同)で106円。

日銀短観が良いを示すと、株価も上昇すると想定し、円が買われて円高になるのではないか?

逆に景気が下降すると、円が売られ円安になる・・・?

日銀のデータを使用し、1983年3月から短観指数とドル円の推移をグラフにしてみた。

青・・・日銀短観

赤・・・ドル円相場

 

短観・ドル円(3)

 

このグラフから、景気良い⇒円高、景気悪い⇒円安と教科書のような理屈になっているかを検証してみる。

筆者の判断によりグラフ中、両者の関連性が強いと思われる部分を四角で囲った。それ以外は逆の動きをしている部分。

四角い箱の部分は全体の約5割を占めている。

 

1. 短観がドル円とリンクしている期間 理論通りの動き

87~89年頃までは、日本バブルの絶頂期。短観の発表が即為替に影響した時期。ドル円が理論通りリンクしているように見える。

94年~05年頃は、為替が幾分遅行するが、短観が良ければ円安になり、短観が悪ければ円安になっている。完全に一致する時期も

ある。為替は景気次第の時期と言える。これは理論上も納得できる。

 

97年~2000年頃の期間は、大手銀行や証券会社の倒産が相次いだ時期でもあり、経済的にも混乱していた。しかし、両社は

見事に相似の動きをしている。2000年にはITバブル崩壊、2001年にはエンロン破たんで株価に影響を与えた時期でもあるが、

短観/ドル円の関係はぴったり寄り添って動いている。

16~18年はゴルディ―ボックス(適温)時代。共に大きな変化のない時期で、両者とも余り動かない時間の中にいる。

 

2. 不規則な動きをする時期

06年頃から両者の動きに違和感が出てきた。07年中頃から新聞でも米国のサブプライムローンの膨張を懸念する論評が多くなった。

そして08年9月に金融危機が顕在。世に「リーマンショック」と名づけられた。

この時の衝撃は全世界に及んだので、日経短観のレベルを超越していたとも言える。そして、09年3月にはバブル以降日経平均の

最安値7,054円は日本経済の底抜けを連想させるほどだった。

 

2006年頃からは、1年毎に首相が入れ替わるなど政策の安定性が欠如していた。

2009年9月には自民党が敗北し民主党政権となり、2012年12月まで続いた。更に追い打ちをかけるように、2011年3月には

東日本大地震と大津波災害が起こった。

こうしたことを大局的・俯瞰敵に見ると、経済原則を超越した経済大混乱期にあったことが短観とドル円の関係を不規則にし、

別の国内外の政治動向や、事件が作用していたと言える。

 

3. つまり

両者の関連は比較的安定期にはある時もあるし、又混乱期には関連性を失う。

両者の関連性は5割ほど。両者の指数を形成する物として、地政学的リスクや政治上の変化、国家信用リスク等

インパクト・ファクターが別作用していると捉えるべきであろう。つまり、関連性は「あるような? ないような?」と認識して

いた方が良かろう。

 

注)資料作成には正確性を期すようにしておりますが、それを保証しきれませんので参考として下さい。

又、グラフの関連性を示す時期の判断は筆者の判断によるものです。

(了)

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