米中 貿易戦争の裏側

(2018.4.6)

3月2日、トランプ大統領は通商拡大法第232条を適用し、「鉄鋼に25%、アルミに10%」の輸入関税を賦課すると発表。

更に3月22日、中国による知的財産権侵害を理由に通商法301条法を適用し、中国製品への輸入品1300品目に約600億ドルの

関税を課すと発表。

これらに対抗し、中国は通商法第232条に対抗し128品目に最大25%の関税を賦課すると発表。

対象品目には米国産農産物、豚肉やワインなど106品目、更に追加の可能性も準備中として対象額500億ドルの対抗を発表。

対抗意識をぶつけ合うこの不毛とも言える貿易摩擦。この問題の背景は何か, 今後どうなるのか。

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(2018.4.6)

1. 米中貿易による米国の大幅赤字と、その貿易品目

米国の17年モノの貿易収支では、総額で7962億ドルの赤字と、前年比8.1%増えた。(*1)

その47%を占めるのが中国で、対中国は3752億ドルの赤字(8.1%増加)。第2位がメキシコ。第3位が日本(前年は2位)で

日本は前年とほぼ同じの688億ドル。

中国からの主な輸出品は、携帯電話、コンピューターとその周辺機器、通信機器で約三分の一。他には玩具・ゲーム・スポーツ用品、

繊維・服飾製品、家具、家電品・電気器具など。

一方、米国からの主な輸出品は、民間航空機や自動車、半導体などの工業製品に加え、大豆、トウモロコシ、小麦などの農業産品。

牛肉、原油、たばこなど。

(第1表)

米中貿易品目

(*2)

米国からの輸出品は、1次農産品や原油・木材など工業レベルもそれほど高くないものも含まれる。この品目を見る限り、どちらが

産業先進国か分からない。

そこに問題の根底が内在している。中国の産業発展の裏側には、中国への技術導入を世界の指導者は許容してきたという歴史がある。

 

2.中国が技術力を高めた背景

中国は毛沢東時代に「大躍進」政策を取り、英国をモデルとする経済躍進を図り、農民を大量動員して、鉄鋼の増産を図った。

しかしその品質は粗悪で、逆に環境破壊を引き起こすもととなり、農業生産力を弱め結果数千万人とも言われる餓死者を出した。

大躍進政策の失敗により、毛沢東は一旦、その地位を開放派に譲るが、「文化大革命」を掲げてその開放派を追放しようとした。

 

その後、解放派である鄧小平が1978年「改革開放政策」へ転換を図り、それまでの鎖国制度を変更し海外の企業を導入して

発展を図ることにした。政府は中国国内に数カ所の経済特区を建設し、税の優遇策などにより促進を図った。

初期段階は日本企業が進出して、工場を建設。安い労働力を糧に、大量生産を始めた。

共産圏の中国進出を日・米・欧の諸国が許した裏には、経済発展をすれば中国は資本主義の自由性、健全性に目覚めいずれ資本主義へ

回帰していくだろうという期待と確信を持っていた。今から見れば妄想であったが。中国国民はこうした外国企業で労働する

ことにより、その安い賃金で生産力を上げ、外国技術力を蓄積して製品を輸出していった。日本の新幹線技術を少し直して、中国の

国産だと今や輸出を始めているのはこうした例だ。

(第2表)

中国名目GDP

 

3. 中国のWTO参加~「中国製造2025」

2001年11月、中国はWTOに参加した。これにより、中国は国際間の貿易において世界共通のルールの下で、取引が進むようになる。

実際、翌2002年には中国の輸出入実績は前年比22%も伸びた。又日本も中国への輸出が、2002年には28.2%、2003年には43.6%と

伸び目覚ましい発展となった。(*3)

2013年3月、習近平/李克強政権は中国製造業の基本体質つまり大量生産方式から、品質・効率のステージアップを目指べく製造強国

戦略研究を始め、2015年5月に「中国製造2025」(メイド・イン・チャイナ2025)を公表した。

「中国製造2015年」は三つのステージでそのレベルをアップしようというもの。

第1ステップ 2025年までに「世界の製造強国入り」

第2ステップ 2035年までに「世界の製造強国陣営の中位」に位置する

第3ステップ 2045年(建国100周年)までに「製造強国のトップ」になる

というもの。

 

これをトランプ政権側から見ると、中国に核心的部分を押さえられ21世紀後半は中国1強の世界地図に代わってしまい、とても受入がたい

ものに映る。

そこでトランプ政権は、工業利権を中国に集中させない為、知的財産の保護を決め、最先端の基本情報や技術を中国に渡すことを阻止する

ことに決めた。それは今回、米国は発表した中国からの輸入関税賦課する品目を見るとよくわかる。

第1表では米国、中国が互いに相手国から輸入額の多い物から表示している。

例えば、現状中国から航空機や自動車、産業用ロボットなど現在、中国からマイナーな輸入しかしていない品目までリストアップ

されている。これは将来中国の工業製品が米国に入り込み、米国の技術と生産拠点を失うことになりかねない。

例えば自動車は新技術のEV(電気自動車)車が想定される。

 

これらは将来とも中国が、先進国から技術移転を条件に工場建設を認めるなどの条件を出して、更にコスト的にも性能的にも競争力のある

製造立国になることを阻止しようとする意図が見える。一方、中国から最も輸入の多い携帯電話や通信機器へ課税を増やせば、逆に

米国の国民にとって深刻な問題を与えるので、取り上げていない。

現状で汎用となっているものには課税せず、将来の米国の基幹産業になりそうなものはつぶしに掛る。そんな構図と読める。

 

一方中国政府もそれに対抗して農産物は、中国国内の生産を上げるように戦略方針を転換させる。米国だけに特定する必要はなく、

他の世界から集めれば良いと考える。

 

4. 今後の見通し

上記のような「貿易戦争」は両国にとって、互いにつぶし合いになり、賢いものではない。米国も11月の中間選挙が終われば、その

烈火も収まる。実際関税が上げれば、消費者の負担が増える。

現在、米中両国は通商政策で最終的にどこに落ち着くか協議をしている。マーケットでも、協議がなだらかにものになるとか、強硬な

物になりそうだとか噂が飛び交い、株式市場は上げ下げを激しいものにしている。

 

4月末には南北首脳会談、5月末には米朝首脳会談が予定されている。それぞれの会談後には、世界のパワーバランスが変わってくることが

予想される。そんな含みもあって世界最強の軍事力を背景に、米国の強面外交が当面続くものと思われる。

 

(出典)

*1 日経新聞 2018/2/6より

*2 米国勢調査局のデータと日経新聞をまとめた

*3 Wikipedia「中華人民共和国の世界貿易機関加盟」より

 

(了)

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(出典)

*1 日経新聞

*2 日経新聞、時事ニュース

*3 wikipedia

 

 

 

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