コバヤシアセットマネージメント > K-amジャーナル > (No.251) 米国、インフレ加速の恐れ
(21.21.5.18)
⇒ 4月の米国消費者物価指数(CPI)は前年同期比4.2㌽プラス
⇒ 10年国債利回りは前日比0.07%上昇し8年ぶりの上げ幅、株価もNYダウは600ドルを超える下落
⇒ FRBの金融緩和策の縮小が示されるタイミングは夏にもありそう
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5月12日発表された4月の米国消費者物価指数は、前年同期比4.2ポイントプラスと市場予想3.6を大幅に上回った。
この流れを受けて、インフレ懸念から米10年債利回りは、一時1.69%と前日より7bp(0.07%)上昇した。急激な
上昇は、市場で最も懸念されているFRBの大量の資金供給をしている金融緩和策を引き締めるのではないかとの懸念が
先行し、その為NYダウが618㌦(2.0%)安となった。
1. 米国の消費者物価指数(CPI)
米国中央銀行FRBが4月28日に開いた政策委員会(FOMC)で、これまでのゼロ金利政策や金融緩和策の維持継続を
決めた。米国が新型ウィルスに打ち勝つまで支援を続ける。
FRBはインフレ目標を2%と定めているが、一時的な上昇では政策変更しない。今回の4.2%は単月の指数であり、
一過性であると見ている。
会合後の記者会見でFRBのパウエル議長は、「経済回復は完全ではないが、ワクチン接種が継続すれば今年後半
には経済はより正常化するだろう」と言い、現状の金融政策の緩和策変更について「未だその時ではない」と
述べた。今は見直しする時期ではないと言っている。
だが4月の米国のCPIは、2017年1月からのCPIの推移をみると平均値は1.5%に近づいている中、4.2%は
急激な変動を想起させる。
(表1)
2. 米国10年国債利回り
4月のCPIが8年ぶりの上昇をしたことを受け、10年物国債利回りが上昇した。その上げ幅は5月12日は1.69%だが
表2にあるように大きな上げとは見えない。市場が反応したのはその上げ幅が7bp(1bp=0.01%)であること
だった。今年の10年物国債利回りの最高値は3月31日の1.73%であるが、前日比2bpプラスであったことから市場
インパクトが弱かったことになる。2020年年初には1.8%を超えていたので、今回のイレギュラーな反応はその
上げ幅にあった。第3表では今年4月以降をズームアップしてみて見るが、急激ではあるものの翌日は下落しており
引き上げ圧力は強いとは言えない。
(表2)
(表3)
3. 纏めと今後の予想
米国では、新型コロナのワクチンの接種率も上がってきており、早くも「COVID-19に打ち勝ったり!」のムードの
中、軸足は経済活動に移動しつつある。株価も調整の中、上値を狙っているように見られる。
しかし、それに冷や水を掛けるとすれば、次はFRBによる引き締めに移るタイミングだ。
現状の緩和策は、FF金利の誘導目標を0.00~0.25%とすること、米国債などを月1,200億ドル購入することなど。
3月11日には、1兆9000億ドルの経済対策を成立させた。これ等により、21年の実質GDP成長率を6.5%、失業率を
4.5%として前回見通し時(20年12月)より大幅に上昇修正させた。21年のインフレ率見通しを2.2%としている。
こうした中、今回のCPIの7bp上昇は、闇夜の風音を敵の来襲と早合点した気味がある。しかし、政策の見直しは
近い将来必ず来る。一説では、「8月のジャクソンホール会議前後に緩和縮小の開始を示唆し、来年から実施する」
との見方もある。
(了)
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