コバヤシアセットマネージメント > K-amジャーナル > 苦境に立つ韓国経済~「ウォン高」と「沈没事故」
(2014.5.9)
韓国・聯合ニュースは8日、韓国経済がウォン高、旅客船セウォル号の沈没によって消費者心理が冷え込み、韓国の2本柱である輸出と内需に打撃をもたらすと報じました。
その背景を調べてみます。
1. 韓国経済の特徴
1) 10の財閥プループを核として発展
特にサムソン・現代グループでGDPの4割近くを占める一極型
2) 輸出依存率が極めて高い (輸出依存率=GDPにおける輸出額の割合)
韓国 49.7% (外務省)
日本27% アメリカ25% 中国40% ドイツ60%
3) ウォン取引はローカル通貨であり、東京外国為替取引所での扱い
4) 輸出する製品の主要部品が日本製
5) 取引相手国は輸出・輸入とも中国がNo.1
6) GDP 1兆1500億ドル(2012年)で世界15位 (外務省)
韓国全体は日本でいえば、だいたい東京都の経済規模に似ています。
2. ウォン高
円高は、韓国にとってはウォン安になります。特にリーマンショック以前は、1円が9ウォン程度で推移してきたのに、2008年年央からウォン安に変わり、2009年の初めごろは一時18ウォンになりました。その後14ウォンをはさんだウォン安の期間は2013年初めまで約4年間続きます。日本では民主党政権が、亡国の政権をしていたことがよくわかります。
ドル表示で言いますと、5年ほど前には1ドル1300ウォンも超えていた時もありました。それが今は1030ウォンです。円に対しても昨年6月から3割ほどウォン高になっています。
韓国の中小企業の輸出損益分岐点は1343ウォンと言われています。
サムソンでは、’14年第1四半期に2期連続の減益になりました。ウォン高が影響しています。
3. なぜウォン高になるのか
その産業構造にあります。現在韓国のS&Pの格付けは、A-から一段下げたとはいえAで日本より上です。これまでの韓国政府の成長見通しでは2014年 3.9%と見ており、日本より魅力でしょう。
こうした基本構図がある限りウォン高の傾向は変わりません。
4. これからをどう見るか
しかし、韓国経済は今後苦境を迎えそうです。日本での先例もあります。
自国の通貨が通貨高になると、企業は海外に拠点をシフトします。
既に中国にシフトしているようですが、一層その傾向は進み、その結果国内就職口は縮小し、失業率は増大しそうです。若者の働き口がないという日本でも経験した現象が現れそうです。
又、不要土地が現れ国内の不動産価格の低下、又将来不安から今でも世界最低の出生率がさらに低下するなど経済の低下スパイラルなど悪化条件が懸念されます。
韓国は当面沈没事故による鎮魂の為、消費を控えているためか、クレジットカードの使用が減少しているようですが、今後対策として内需拡大と共に、TPPやFTAなど各国連合での取り組みが必要となります。