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18年2月 株価急落の要因は何か
(2018.2.9)
NYダウが2月5日に1,175ドル下げ、更に2月8日には1.033ドル下げた。これに引きずられて日本を含む
世界の株価が大きく値を下げた。
その原因は何だったのか、この不安定はいつ収まるのか見てみる。
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1)大幅下落前の状況
NYダウは急ピッチで上昇してきた。
1月4日には初の25,000ドル台にのせ、1000ドル上げるのに23営業日だった。
更に1月17日には26,000ドル台に乗せ、1000ドル上げるのにたった8営業日。
この時の上昇原因としては、昨年12月20日米国上下院でトランプ氏の公約である税制改正法案が可決、
成立する見通しが立ち、市場を盛り立てた。その減税規模は10年間で1.5兆ドル(約170兆円)が見込まれ、
法人税は35%が21%に引き下げれ、更に個人所得税も39.6%から37%に下げられる。
こうした結果2017年の米国株式市場は、NYダウで年間4,984ドル、25.2%の上昇となった。FRB
12月の公開市場委員会(FOMC)では、既定路線のように17年内3回目の利上げを実施。
更にこの傾向を支えるように、生産国である原油価格も上昇し、エネルギーセクターが久しぶりに脚光を
浴びて来た。
日本はどうか。2018年1月4日の大発会ではいきなり741円の上昇を付け、年初日としては26年ぶりの
高値を付け、今年の株価の吉兆を予測させた。背景には、米国や中国の好調な経済指標があった。
又18年3月期の企業業績も順調で、前年比10%ほど純利益が上昇見込みと報じられ、この調子で行くと
一株当たり利益(EPS)が上昇し、現状のPER(15.5倍ほど)でも2018年末で25,500円~26,000円は
可能と識者は報じていた。
世界でわずかに株価低迷した英国(EUからの分離問題を抱える)を除き、先進国、新興国とも景気先行きに
明るい見通しで、1月23日のIMF世界通貨基金(世界189ケ国が加盟)は、世界成長率見通しを上方修正を
した。それは2018年の世界全体の見通しを0.2%プラスし3.9%、2019年を0.2%プラスし3.9%とした。
日本の見通しは2018年は0.5%増の2.2%成長、2019年は0.1%増の0.9%とした。
こうしたゴルディロックス(適温)の経済情勢下で、誰もが本年は朝鮮半島の不安はあるものの、まずまず緩慢な
株価上昇を予想した。
しかし、現実は大きな津波が押し寄せている。1月4日~2月8日を見ると、
NYダウ ▼1,215ドル、▼4.8%
日経平均 ▼1,616円、 ▼6.87%, と下げた。
2)大幅下落の要因
株価が大きく変動するにはそれなりの訳がある。2008年のリーマンショックでは前年くらいからサブ・
プライムローンという怪しげな証券化商品が販売され、その問題が社会の不安になっていた。
又、2011年の東日本地震・津波災害でも株価は大きく下げた。更に2015年8月の人民元引下げによるチャイナ・
ショックも理屈は付く。
しかし、今回2月5日のNYダウの下落は、いきなり来た。いや、その前営業日、2月2日に▼666ドル下げて
いるのでこれが予兆と言えるかも知れない。
2月5日の下げの要因は米国の急激な長期金利上昇が原因だとメディアは伝えた。確かに1月31日には
米10年物国債利回りは2.75%と3年10ケ月ぶりの高い水準となった。確かにそれまで2.5~2.6%で推移
してきたものが3年ぶりに上昇と聞けば、景気への影響を危惧する。しかし、2%台の枠内だ。
これが原因というのも難がある。
次に日経新聞によると恐怖指数(VIX指数)がの上昇が、連動ETF,ETNの価格に大暴落をもたらしたとの報道もある。
これは株価のボラティリティーの激しさを指数とする金融商品で、巨額の損失が発生しているというのだ。
VIX指数が下がると価格が上がる「インバースVIX」連動のETFやETNでは、株価安定期には高収益を
上げていた。しかし、5日の株価急落でVIX指数が急上昇し、「ベロシティーシェアーズ・デイリー・
インバースVIX短期ETN」(ティッカー:XIV)や、「プロシェアーズ・ショートVIX短期先物ETF」
(ティッカー:SVXY)などは大きな打撃を受けた。前者は前日の高値118ドルから7ドルまで急落し、
後者は前週末の終値から88%下げた。
この二つの商品だけで、運用資産総額30億ドルからわずか2日間で1億5000万ドルにまで縮小したとの報道だ。
これは経済安定を前提に売り出されたものだが、恐怖指数上昇による大暴落が現物株式に襲っているという見方だ。
確かにこれも一因であろうが、VIX指数の連動でたった二日間で95%も暴落するというのもAIに頼り切った予防措置が
欠けていたのではないか。
なかなか、これだという要因にたどり着かない。
今回の下落は1987年10月19日(月)のブラックマンデーに似ているという識者が多い。30年前の10月19日(月)に
NYダウは▼507.99ドル、▼22.6%下げた。下落率では1日に22%も下げたのは史上初めて。
この時は前年1985年9月のプラザ合意後のドル安で、世界的にインフレ懸念から金利上昇があった。
また、ブラックマンデーの2ケ月前にはFRBの議長がボルカー氏からグリーンスパン氏への交代した。
今回もFRB議長がジャネット・イエレン氏(71歳)から、第16代議長としてジェローム・パウエル氏(65歳)に
引き継がれる。将にその日が大幅下落の当日2月5日(月)だった。
今回の下落が、金利上昇、FRB議長交代とブラックマンデーに相似していると言えなくもないが、こうした原因は
後付けの理由に過ぎない。
未だはっきりした因果関係が解明されていない。
ブラックマンデー後日本政府は金融緩和を続け、結果日経平均は半年後には下落幅を回復。(wikipediaより)
最も大きな理由は株価が急激に上げたので、その調整だったと言える。特に原因らしいものは発見され
なかったと後日言われるかも知れない。要因らしい要因は見つからず、複合の要因が重なり、それが
売りに売りを誘発したものと言える。
株価下落が底を打ったとはまだ言えない。まだ不安定さは残っている。
しかしブラックマンデーの歴史に学べば、回復まで半年近くを覚悟しておかねばならない。
(了)
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