中央銀行 資産圧縮の影響

 

(2017/8/31)

アメリカ・ワイオミングのジャクソンホールで今月26日まで3日間、中央銀行トップが集まりシンポジュームが開催された。

今回のテーマは「金融の安定」。今回はFRBの年内3回目の利上げの時期と、主要各国の中央銀行で積みあがった資産を今後

いかに減少させていくかという難しい局面の中でのシンポだった。

しかし、結局は安易な政策案は示されず、北朝鮮のミサイル発射の不安定性の中、年後半に問題を先延ばししたこととなった。

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17年2月末の主要各国の保有資産は、日本4.4兆ドル、欧州4兆ドル、米国4.5兆ドルとなっている。

今後この積み上げた資産を減少させていく平準化の道のりは険しい。

各国の実情を考察してみる。

 

1. 米国の金融政策

米国は08年のリーマン以降3回の大きな量的緩和策を導入し、リーマン前では約9000億ドルだった資産が、14年秋頃には

約5倍の4.5兆ドルまで積み上がった。

2008年10月からの量的緩和第1弾(QE1)では、9000億ドルから2兆ドルまで進み、2010年11月の緩和第2弾(QE2)は

2.4兆ドルから3兆ドルまで進んだ。更に2012年9月の第3弾(QE3)では、3兆ドルから4.5兆円に拡大した。

米国は緩和策導入時には常に、「安定してきたら縮小策を取る」という出口の道筋を見せて来たので、14年秋頃からは

積上りはない。

来月9月のFRBで資産の縮小が決定され、10月から始まる見込みだ。適正化の水準まで縮小される期間は5年ほどを見込む

規模は月に約100億ドル。米国債で最大月に60億ドル、住宅ローン担保証券で月に40億ドルの予定だ。

この政策は資産の売り市場となるので、経済的には市場に水を差すことになる。実際、13年5月には当時のバーナンキ議長が

買い入れ規模の縮小を示唆するや、債券相場が急落し、新興国を中心とした市場が荒れた前例もある。

予定通りの減少が進むか否かは、経済指標を見ながらの薄紙を剝がすように進む。

 

2. 欧州の政策

2009年10月、欧州ではギリシャ政権交代による国家財政の粉飾決算の暴露から危機が始まった。その後スペイン・ポルトガル・

イタリアなどに波及し欧州危機は広がった。

2013年頃からはデフレ懸念が広がったことから、2014年6月ECB理事会でマイナス金利を導入した。そうしたことも奏功し、

ユーロ圏の2017年1-3月期の実質GDP成長率は前期比年率+1.7%と見込まれる。現在の消費者物価上昇率は前年比+2.0%前後で

インフレ基調が広がってきている。

こうした中、ECB(欧州中央銀行)は、今年4月毎月の資産購入額を減らした。来年には更に減額しそうだ。

既にECBは徐々に舵を変えつつあり、米国の利上げに続き2018年にはテーパリングに向かうものと予測される。

 

3. 日本の政策

日本では日銀に黒田黒田総裁が就任し、2013年4月「インフレ率2%」を掲げて異次元の金融緩和、所謂「黒田バズーカ」策が

打ち出された。資金供給量を「2年間で約140兆円の緩和」を行おうとする政策。この政策により、日銀は年80兆円もの国債や

ETFを購入することとなった。

2016年1月、2%のインフレ目標を早期に達成しようとしてマイナス金利政策を発表した。

日銀は2014年10月、国債の購入額を年80兆円と決定したが、現況は買うべき国債が少なく50-60兆円に留まっているとみられる。

それでも資産は増加しており、本年6月末には総資産は502兆円となった。しかも、今日に至るも物価上昇率は対前年度0.4~

0.5%で目標には達していない。2%のインフレ目標も到底未達の現況では、とても資産縮小に向かうどころではない。

 

17年度の企業業績は好調で、野村証券によると2017年度の業績は金融を除くと対前年度15%プラスを予測する。

資産縮小と言えば、日銀はこの好調な景気を腰折れさせることを懸念する。

 

4. まとめ

世界経済の現下の最も大きなリスクは米国トランプ大統領の言動と、北朝鮮のキム・ジョンウンの無法国家だ。

トランプ大統領のリスクは、10月からの自身の国家予算方針に対して議会がどこまで支援してくれるかだ。法人税15%公約も

20%台になりそうだし、メキシコ国境での壁敷設もメキシコが金を出す訳がなく、費用の捻出の目途が立っていない。

北朝鮮も今月には日本上空を飛び越えるICBMを発射したが、米国との戦争に一挙に陥るという見方は少ない。

今年に入り、北朝鮮ミサイル発射のニュースは、日本を含め限定的で若干下げるも、回復する。勿論、戦争の懸念は残るものの、

マーケットも大規模戦争はないとみている。

米国も、欧州も膨れ上がった肉を筋肉体質にしようと転換しようとしているこの時期、日銀だけが物価上昇率2%に引きずられて

まだ資産を増やそうとする姿勢は無策に見える。弊害を続けているようにしか見えない。

日銀は、早期に資産縮小に切り替えるべきだ。

 

 

(了)

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