A;
日本の経済は貿易によって成り立っていることが、最近の中国の成長にあわせ
かっての重厚長大産業が活性化しているのを見ると、よく分かります。
斜陽とまで言われた造船や海運が勢いを上げているのは中国の恩恵です。
しかし、いつまでも経済成長は続きません。どこかで息切れがして来ます。
その後を追いかけてきそうなのが、インド。人口11億の民の国。
これから4回にわたってインドを見ていきます。
第1回、2回はインドの経済基礎知識、3回は現代インド経済の実情。
第4回はインド経済の今後を見ます。
参考文献は第4回目に掲載します。
では今回はインドの経済基礎知識。
【人口】 ’06年末で11.2億人。出生率は2%弱。大きくないと見られますが、
それでも母数が大きいので、10年で1億人が増える。
現在の世界一は中国ですが、国連統計によるとインドの総人口は
2030年前後には14億人を突破して、「一人っ子」政策の中国を抜いてしまいます。
更に2050年には16億人となり、世界の人口の18%を占めることになります。
インドの特徴は、人口構成です。15歳未満の若い層が32%を占めている。
中国は21%、日本は14%です。
つまり、15歳未満の子供はインドは3人に1人なのに、日本では7人に一人と言うことになります。
インドの人口ピラミッドは見事に裾野を広げたピラミッドです。
【教育】こうした若年層に良質な教育をすれば、大きな成長が期待できます。
インド政府は過去30年間で政府の教育の支出を2倍に増大し、現在はGDPの4%支出となっています。
大学の進学率は未だ10数%ですが、大学の数は過去30年間で3倍になり、特に花形産業である
IT企業に優秀な人材を送り出しているインド工科大学7校の志願倍率は50倍と超狭き門です。
01年末の国立・州立の大学は272校、カレッジが11,146校です。
しかし、インドの初等教育は義務教育ではないため、貧困な農村部には就学していない子供もいます。
文字の読み書きができる識字率でみると、04年段階で61.3%とライバルの中国の90.3%に比し、
見劣りをします。
【インフラ】道路、電気、港湾、鉄道、空港なども遅れています。
インドで商業の中心地はムンバイ(旧ボンベイ)ですが、首都ニューデリーとムンバイの
間は現在でも高速道路や高速鉄道もない。穴ぼこだらけの一般国道で結ばれています。
両都市間1400Kmを約40時間掛けて輸送しているのです。
港湾整備の遅れも深刻です。インド最大の陸揚げ港のムンバイではコンテナが山積みにされ、
ムンバイに陸揚げされてからニューデリーに品物が着くまで、1ヶ月かかるケースをあったと言います。
電力も深刻です。インドの富裕層や外国人の住宅では小型発電機を設備して、エアコンや
冷蔵庫が止まらないようにしています。
又、最近出来た自動車工場は100%自家発電で、停電のリスクを回避しています。
交通渋滞に拍車をかけているのがおなじみの神様のお使い、牛です。
デリーでも35,000頭の牛が路上を闊歩し、又汚しています。
インド政府はこうした遅れには早くから気がついており、「インフラはアキレス腱」と認めています。
交通網についてはインドの主要都市をぐるっとつなぐ「黄金の四辺形」計画が07年春に完成されます。
これは全長5850Kmを4車線で結ぶインドの幹線道路になります。
又電力は「ウルトラ・メガ・パワー・プロジェクト」が進行中で出力400万キロワットの
大型発電所を全国5ヶ所以上新設する計画で、すでに入札はインド企業が落札しています。
|