A;2006年度税制改正の中で注目を引いているのが相続税の物納制度の改正です。
相続税は、本来金銭で納付することが原則ですが、しかし財産課税の性格を持っているため納付すべき相続税額を延納によっても困難な場合があります。このような場合の救済方法として、取得した財産を納付する物納制度があります。
物納の申請件数は平成15年度で4,775件、対前年度16%減、平成16年度は3,065件、対前年比36%も減少しており、減少傾向が続いています。その背景には許可基準の明確化や緩和、またその手続きの迅速化に問題があるとの事で、今回抜本的な見直しが行われました。
1. 改正のポイント
(1) 物納許可基準の緩和・明確化
これまで物納非適格とされる場合もあった非上場株や市街地調整地域内の農地や山林も条件により可能となりました。又、接道条件を充足していない土地も他に適当な物件が無い場合に限り認められることになりました。
しかし抵当権がついている不動産や、境界が明確でない土地は不適格とされています。
非上場株は基準を緩和することにより、中小企業の事業承継の円滑化を目的としています。
これまでは、一定要件を満たす優良法人株に限定されていましたが、今回の改正により譲渡制限付株式以外は業績等を問わず物納対象と認められました。
(2) 物納手続きの明確化
物納申請する場合は、原則として相続開始後10ヶ月以内に所定の書類を備えて所轄税務署長に提出しなければならなくなりました。この申請について税務署長は原則3ヶ月の審査期間中に許可又は却下の判断を行うことが明確化されました。
申請時には財産の登記事項証明書、測量図、境界確認書等一定の書類を提出しなければなりません。
書類に不備があった場合、税務署長は請求後20日以内に必要な書類の補正や提出を求め、これがされないと申請は取り下げたとみなされます。
2. 物納対策のポイント
相続開始後10ヶ月以内に所定の書類を提出しなければなりませんから、相続開始以前から準備に取り掛かる必要があります。
先ず納税用土地を条件に照らして選択をし、特に境界確認書等を隣地地主の立会いを求め整備しておくこと。又、その土地に廃棄物や土壌汚染等がない事も確認しておく必要があります。自社株の物納については、国がそれを売却する時、自社で買戻しできないかどうかも予め検討しておくことも必要です。
物納を検討されている方は、早い段階から専門家と相談して方針を定め、準備を進める必要があります。
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