独立投資顧問の役割(3)-英国

独立投資顧問の役割(3)-英国

(2018.1.23)

 

証券界で今最も旬な商品はNISA(ニーサ)だろう。2018年に入り、NISAシリーズは3本。2014年から始まった

そもそもの①NISA, 2016年から始まった②ジュニアNISA, そして2018年1月から始まった③つみたてNISA

これらは、投資コンセプトがはっきりしていることと、投資への導入機会の創出、そして税制優遇制度を加え、現在

最も一般国民にとって投資対象として検討してよい商品と言える。

実はこのNISA, 実は発祥はイギリスにあり、それを日本版に直して導入したもの。イギリスでは”ISA”として、

税制優遇商品として開発されていた。日本の財務省、金融庁はこの制度を研究、導入し日本の”N”を頭につけ

「NISA」となずけた。そこで、イギリスの独立系投資顧問の実情を研究して見たい。

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以下は田中健太郎氏の資料から、独立系アドバイザーにとって参考と思われる部分を抽出させて頂いた。

英国の証券界を調べてみると、政府が国民に公的年金の補完として長期資産形成の機会を与え積極的投資を支援

しようとする一方、証券界の利益相反を如何になくするかというの行政と業界の葛藤の連続だった。

英国では日本と比較にならない程に、独立系ファイナンシャル・アドバイザー(Independent Financial Adviser,

IFA)の位置付けが重要な位置を占めており、政府の規制も度々なされている。

 

1.IFAの概要

資産形成の手段としては直接株式や投資信託を購入する以外に、保険・年金商品を介して資産形成を図ることは極く

一般的な方法であるが、その購入ルートとしては生命保険会社、銀行など以外にIFAを通して購入するルートがあり、

このIFAルートが約3分の2を占めていると言われる1)。

IFAのルートが高い比率を占める理由として、1988年導入のポラリゼーション(Polarization,二極化)ルール

存在がある。ポラリゼーション・ルールとは金融商品を投資アドバイスを提供する人を、二つのカテゴリーに限定

しようとする制度だ。二つとは、

①ある特定の金融機関と提携し、その商品のみを扱う(特定アドバイザー)

②全くの独立アドバイザーとして市場にある全商品を対象にする(独立アドバイザー)

の何れかでなければならない。この②がまさしくIFAだ。

更に2012年12月31日、個人向け金融商品販売制度改革(Retail Distribution Review, RDR)が実施された。その内容は、

①運用会社からIFAへコミッションを支払い禁止と手数料の開示

②IFAの資格要件の厳密化、カテゴリーの明確化

③IFAのプロフェッショナル水準の向上

④2018年からFA会社の自己資本比率の厳格化

RDR導入で最も重視されるのは、コミッションの支払い禁止である。

 

2. RDR導入

RDRは2006年から議論を重ねてきて、6年以上の準備をしたうえ2012年末に導入された。

その目的は消費者保護の観点から、消費者が投資の意思決定の際により適切な投資アドバイスが受けることが

出来るようにするためである2)。アドバイザーを2種類のタイプに分類し、特定金融機関の商品を提供する者と、

運用会社や金融機関に対し独立してアドバイスをする者(つまりIFA)の2種類に分類された。更にIFAの資格水準を

厳格化することとし、要件として大学卒業程度とし、資格取得後も毎年35時間以上の継続教育受講の義務があると

した3)。

日本のCFPのケースで見ると、日本では学歴は要件としないが、合格率2割台の資格試験を通過し、

3年間の実務習得を要する。更に高度な知識・技能を必要とすることから2年間で30時間の継続教育を必要とされて

いる。(ちなみに米国の独立系FP団体のNAPFAのメンバーは、2年間で60時間の研修を要する。)

 

RDR導入で最も注目されるのがコミッションの支払い禁止だ。その背景にはアドバイスする者がある商品をアドバイス

するに際し、商品の内容よりもコミッションの高い方をアドバイスするという業者利益に傾斜しがちなことを排除し、

消費者の立場に立って最も適切と思われる商品をアドバイスすることにより、投資業界に透明性と健全性をもたらす

ことが出来るようにした。

自己資本比率に関して、FA会社は金融サービス機構(Financial Service Authority, FSA)規則で設立時に1.25万ポンド、

設立4年目以降2万ポンドの資本を積むことを要する。更に2018年から年間固定費の13週間もしくは2万ポンドの何れか

大きい額を資本として積むこととされている。

 

3. RDR導入後の変化

RDR導入後に, 規制庁である金融サービス機構(Financial Service Authority, FSA)がアドバイザーの人数を公表した。

それによると、2011年末の合計人数は25,616人、2012年末は20.453人と約2割減少した。同時に銀行系アドバイザーの

人員は44%減少した4)。

同時にアドバイザーと顧客との間の報酬(Fee)意識の相違について、調査がされている。顧客側のFee相場は1時間当たり

100ポンド以下を、アドバイザー側からは1時間当たり100ポンド~200ポンドを希望してるギャップが見られる。

 

これら以外に検証を要する主要項目として、FA会社とIFAが使用するプラットフォームがある。

FA会社の人員規模は米国のケースでも同様であるが、概して小人数で、1社あたり平均人数は4.66人である5)。

日本の投資顧問会社と比較して見ると、2017年11月現在金融庁に登録している投資助言・代理業者の数は474社。

内関東財務局管内が399社と全国の84%を占め、更に東京管内に絞れば342社、全国の72%が東京に集中している。

業者の人員規模は1~10人が78.5%、11~50人が14.6%、51人以上は4%と小規模である6)。

プラットフォームとは、インターネット上で複数の運用会社の投資信託を扱うサーイスのこと。イギリスには

現在運用会社系、保険会社系、独立系など20社ほどのプラットフォーム会社がある7)。

投資信託販売では、プラットフォーム経由でIFAが投資家に販売する分も含め、9割がIFAによるものとなっている8)。

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1)銭谷薫著「岐路にたつ独立金融アドバイザー」(出所:The Association of British Insurers)

2)田中健太郎著「英国リテール金融業界に構造改革を迫るRDR」2013

3)2)に同じ

4)”First Official RDR stats:Adviser numbers down 20%, Bank Advisers fall 44%” Money

Marketing, 27 March 2013

5)The Financial Adviser market :In Numbers, “Association of Professional Financial Advisers.

6)関東財務局「監督行政の現状等について」2017.11.29

7)公益財団法人 日本証券経済研究所「イギリスの証券市場」証券業者より

8)同上

(了)

 

 

 

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