日米首脳会談 その背景と市場への影響

日米首脳会談 その背景と市場への影響

(2017/2/15)

 

安部首相のトランプ新大統領との初めてのワシントンでの首脳会談が平穏の中で終わった。

選挙前には貿易不均衡の原因として、安全保障の片務的な軍事態勢や、自動車の貿易不均衡、中国と並んで

日本を為替操作国と名指していたトランプ大統領との会談は気の抜けない会談であったはず。

ゴルフを挟んで2泊し、都合5回の食事を共にするとは首脳会談としては異例中の異例だ。

この異例の会談中、何が話されたのか日本だけでなく、世界が大きな関心を持って注目をしている。

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安部首相がトランプ大統領と会談したのは2月10日(金)。就任してまだ20日ほどで、閣僚も決まらず、主要国で

トランプ氏会うのは英国のメイ首相に続き二人目。二人の会談そのものは45分間。共同記者会見で話すブリー

フィングは事前にほぼ用意されている。今回日首相官邸から2人が行き、下打ち合わせをしたらしい。

今回は激突するようなアジェンダ(議題)は出ないと知っていても、2泊3日も一緒にいて、シリアスな話が

出ない訳がない。

トランプ氏が選挙中に発言した内容から何が飛び出すかわからない。選挙中の発言としては、米国製の自動車が

日本で売れない問題、米軍駐留費負担金問題、日本が為替操作をしていると指摘している問題、TTP離脱問題と

二国間での通商問題、難民受け入れ問題、南・東シナ海の安全保障問題(尖閣と安保条約第5条)、沖縄の普天間

基地を辺野古移転問題、北朝鮮の核と長距離ミサイル問題、等々ある。

 

自動車問題は日本から乗用車を米国に輸出する際には2.5%の関税が掛っており、一方米国から日本に輸入される

される際には関税はかからない。欧州の車は右ハンドル仕様にしており、燃費もよく人気があるのに対し、

米国車は左ハンドルで燃費が良くない。さらに現在は日本ブランド車を日本から輸出するよりも、現地工場で現地の

部品を組み立てている量のほうが、日本より直輸入する量の倍近くになっている。

また日本は米軍駐留費も経費の75%を負担している。これは韓国、ドイツなどよりかなり多い。

 

トランプ氏は日本は為替操作をしているというが、日本は円売り介入を2011年以降行ってはいない。

結局トランプ氏の主張するところは貿易の不均衡と、雇用の改善の2本に集約される。

下の表は2016年米国の貿易統計の国別の赤字表だ。単位は億ドル。

米国貿易赤字

(総額=1996年 1702億ドル、2006年 8279億ドル、2015年 7456億ドル、2016年 7343億ドル)

 

この表からトランプ氏の最大の相対する国は中国だ。しかし、中国から輸入している物をすぐに

American First“と言って、国内生産に切り替えられるのか。今アメリカに行って衣料品を見るが、”Made

In USA”を見たことがない。中国、ヴェトナム、タイ、バングラディシュなどから来る。もしこれらを

米国製にしたら、アメリカ国民は割高の物を買わねばならなくなる。人件費が違うからだ。

帰国後、安部首相がメディアや国会で報告したところによれば、トランプ氏は経験が長い安部氏に国際問題や

中国の問題、さらにG7の国事情を質問したようだ。

 

今回の首脳会談でテーマにならなかったと言って安心はできないのが二国間通商交渉だ。日米では事実として

自動車を主とする輸出超がある。その条件として農産物の門戸拡大や他の買い入れを条件とされるかもしれない。

今後この分野は麻生副総理兼財務大臣とペンス副大統領の間で話し合いをされることになる。

 

日米首脳会談終了後トランプ氏は「2~3週間以内に税制で驚くべき発表をする」と明言したことから期待が膨らむ。

予想するに、法人税を35%から20%に引き下げ。この予算措置として10年間で2.2兆ドル。(野村證券資料より)

さらに社会保障費の削減(オバマケア)や個人所得税の軽減も予想される。

こうしたこともあって、NY株式市場は堅調だ。下記表は選挙のあった11/8から直近までのNYダウと日経平均を

寄せてみたものだ。

新大統領後のマーケット

これを見ると、日経の方が恐る恐る追随しているような、自信がなさそうに見える。

 

先の両首脳会談により、お互いに信頼できる間柄になることによりマーケット市場も活気を呼び込むことができれば

良いのだが。

(了)

 

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