「貯蓄から投資へ」 あれどうなった?

「貯蓄から投資へ」 あれどうなった?

(2017/5/24)

 

「貯蓄から投資へ」というスローガンを作ったのは2000年台前半だろうか。それは貯蓄をして銀行から企業に融資する投資

(これを間接投資という)より、一般消費者が株や債券に直接購入する投資(これを直接投資という)の方が効率が高いと

政府、産業界が期待した結果だ。 その後、どうなったのか、又他の国との比較はどうなのか比較してみたい。

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(1)日銀の外部機関として「知るポルト」金融広報中央員会という機関がある。FPなら誰もがお世話になっている「暮らしと

金融 なんでもデータ」を発行している機関だ。実はこの機関は戦後すぐ各都道府県に「貯蓄推進委員会」を作り、貯蓄推進運動の

直轄機関として貯蓄を旗振りを推進してきた。事務局は日銀内にある。この時、投資という考えはない。

 

貯金は安心と全国にある郵便局を利用して、貯金と簡易保険で国民の資金を国が吸い上げ、財政投融資という形で

国家予算とは違う形でインフラ整備を進める資金源にして復興を進めた。

貯蓄もある時期、10年も持っていると倍になるような時期もあった。(年率7.2%、10年で丁度倍になる)

しかし、1990年のバブルが破裂して以降、金利は次第に下がり、今や1000万円の大口定期で1年預けても0.035%さらに税金

20.315%を 差し引き年間2,788円の金利を受け取るだけ。定期と聞いて呆れるくらいだ。

なら個人向け国債はどうか。個人向け国債10年の変動型も、0.05%の金利だ。年間受取金利は税引き後3,984円。

つまり、貯蓄型は定期預金も、国債も1000万円預けて金利は年間数千円なのだ。   これでは貯蓄に向く人がいないのも当然。

政府の願った通り貯蓄からリスク資産に、資金が流れているだろう・・・と考える 専門家の話。実は一向に貯蓄は減っていない。

日本の金融資産(’14~’16)

(資料:日銀家計の金融資産)

上記表の年度毎の総合計は【14年 1,694兆円、15年 1,741兆円、16年 1,809兆円】。 14年から16年の3年間で現預金は

むしろ増えていて、投資信託と株式が増えていない。 問題は現預金が50%以上あり、これが減少傾向を示していないということ。

 

(2)次に他の国と比較してみる。

(資料:日銀:資金循環の日米欧比較)

 

国別‗金融資産

【各国の総額: 日本 1,752兆円、 米国 73.1兆ドル、 ユーロ圏 22.3兆ユーロ

ここで注目すべきは米国と日本の現預金の比率だ。日本は52%、米国14%。リスク性商品は日本 13.6%、

米国 46.1%。この違いは何だろう。この傾向は今に始まったことではない。

 

政府はこの傾向を改めようとNISA制度やIDeCo(確定拠出制度)、ジュニアNISA 積立NISAなどの新制度を

次々に導入してきた。又14年1月からROEや営業利益を重視したJPX日経400指数を導入してきた。

こうしたこともこれまで経験の浅い国民に、リスク性商品を購入してもらうためのツールだ。

 

(3)なぜ現・預金からリスク性商品にお金が回らないのだろう。

一橋大学の野間幹晴准教授と藤田勉同大学客員教授の論文(*1)にはその理由として、次のように挙げている。

1)日米の金融リテラシーの差の原因の一つは年金制度  日本は他に例を見ない年金制度が張られているので、他国に比較して

リスクに向かなくて良い環境がある。

2)問われる販売業者の姿勢  日本では投信のコストが米国と比較して5倍ほど高い。

3)新商品も高コスト  一時払い保険やファンドラップなど

4)歪な日本のETF  ETFの一番の購入者は日銀(年間6兆円)、売れるのはレバレッジ商品やインバース商品

5)投資家保護の体制整備が必要  SECの発足は1992年、金融庁発足は2000年で体制整備が遅れている。

6)ロボアドバイザーとETFの普及の遅れ

 

日本の株式市場はその6割が海外投資家に左右される構造になっている。仮に上記の16年の現預金の3%でも株式・投信に

向けてくれたら937兆円×0.03=28兆円が動く。

経済担当大臣がなすべきことは銀行員や証券会社社員や保険会社社員を鼓舞することでない。彼らは利益相反をする立場だ。

最も中立的立場一般大衆にこうした利点、欠点を伝えることのできるのはファイナンシャル・プランナーだと自信をもって言える。

是非活用して欲しい。

尚、今は「貯蓄から資産形成へ」と言い換えて、不安感の払拭を図っているようだ。

*1 証券アナリストジャーナル 2017

(了)

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 商号等   小林 治行 (コバヤシ アセットマネージメント)

所長 小林 治行

投資助言業 関東財務局長〈金商〉第2841号

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報酬等は「投資顧問契約の契約締結前交付書面」又は、ホームページの投資助言業のページをよくご覧ください。

 

投資リスクについて

1. 株式

価格変動リスク: 株価の変動により投資元本を割り込むことがあります。

また、株式発行者の経営・財務状況の変化及びそれらに関する外部評価の変動等により、投資元本を割り込んだり、

その全額を失うことがあります。

株式発行者の信用リスク:市場環境の変化、株式発行者の経営・財務状況の変化及びそれらに関する外部評価の

変化等により売買に支障を来たし、換金できないリスクがあります(流動性リスク)。この結果、投資元本を割り

込むことがあります。

2. 債券

価格変動リスク: 債券の価格は、金利変動等により上下しますので、投資元本を割り込むことがあります。

また、債券発行者の経営・財務状況の変化及びそれらに関する外部評価の変化等により、投資元本を割り込んだり、

その全額を失うことがあります。一方、債券によっては、期限前に償還されることがあり、これによって投資元本を

割り込むことがあります。

債券発行者の信用リスク:市場環境の変化、債券発行者の経営・財務状況の変化及びそれらに 関する外部評価の

変化等により売買に支障を来たし、換金できないリスクがあります(流動性リスク)。この結果、投資元本を割り

込むことがあります。

3. 外国株式・外国債券

為替変動リスク:外国株式や外国債券等の外貨建て金融商品では、為替の変動により投資元本を割り込むことが

あります。

4. 外貨建て証券

為替変動リスク:投資対象が外貨建て証券(例えば海外市場に上場にしている株式、外国政府・公的機関・企業等が

発行する債券)では、前述の株式、債券のリスクに加え、為替の変動により、投資元本を割り込むことがあります。

例えば、売却・契約時に投資時期よりも、円安・円高で手元に戻る円貨の額が変わり、円高の場合には投資元本を

割り込むことがあります。また発行した国や地域、適用する通貨発行国の経済状況や政治状況の変化等により売買に

支障をきたし、換金ができないリスクがあります。

(流動性リスク)

5. 投資信託(上場投資信託=ETFを含む)

投資信託は、その投資信託が投資としている資産(例えば株式、債券、商品等)により、価格変動リスク、信用

リスク、流動性リスク、為替変動制リスクを内包しています。

このため、投資元本を割り込んだり、換金ができなかったり、その全額を失う事があります。

6. 投資する国や地域について

カントリーリスク:投資した国や地域により、その国や地域の政治・経済・社会情勢の不安定化や混乱などで投資し

た資金のすべて、又は一部が回収できないことがあります。

戦争や内乱、経済危機がある又は予見される国や地域に投資することは各リスクが極めて高くなります。

 

 

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